岐阜県出身の西田 孝徳さんは、理学療法士としての深い知識と経験を生かし、パーソナルジム「BODYMAKE GYM START」とその姉妹店「START LITE GYM」を立ち上げました。
理学療法士として6年間、パーソナルトレーナーとして4年間、人々の健康を支える仕事に情熱を注ぎ、現在ではトレーナーの育成にも尽力しています。
「無理なく続けられるトレーニングを提供したい」という西田さんの想いは、彼が持つ臨床栄養指導士、睡眠ヘルスアドバイザー、スキンストレッチスペシャリストの資格を生かした、一人ひとりに合わせた心温まるサポートに反映されています。ただ体を動かすだけでなく、食事や睡眠、心のケアまで、全方位的な健康サポートを目指し、月間200以上のセッションを実施。予約待ちの状態が続くほどの人気を博しています。
パーソナルトレーナーとしての道を選んだ背景、ジムを運営する上での心得、そして心身のバランスを大切にするトレーニングの哲学について、話を伺いました。
プロフィール
代表 西田 孝徳(にしだ たかのり)さん
1981年長崎県生まれ。理学療法士として6年勤務したのち、パーソナルトレーナーとして独立。2020年にパーソナルジム・BODYMAKEGYM STARTを開業し、現在4年目となる。トレーナー育成のセミナーを実施し、約100名のトレーナーや医療従事者の指導経験を持つ。理学療法士をはじめ、臨床栄養指導士、睡眠ヘルスアドバイザー、スキンストレッチスペシャリストの資格を取得。
幼少期は野球漬けの日々。腰を痛めた経験から理学療法士の道へ
思い返せば、幼少期はずっと野球漬けの毎日でした。小学4年生から高校3年生まで、野球歴はだいたい10年ぐらいですね。ファーストにピッチャー、外野などいろいろポジションを経験しました。体を動かす喜びを知れたのは、野球に打ち込めたおかげだと思っています。
しかし、転機が訪れたのは高校生の頃。ずっとスタメンで頑張って全国大会を目指していたんですが、ある日腰を痛めてしまって……。治療の一貫でリハビリの先生に体を診てもらって、痛みや動作がとても楽になったのがとても印象に残っています。それが理学療法士のお仕事だと知ったのは、将来を意識し始めてからだったんですが(笑)。そんな経験から、大学では理学療法士になるための勉強をして、卒業後は病院に約5年勤めることになりました。
私が配属された部門は整形外科で、勉強をするための制度がしっかりしていたのが思い出深いです。研修にも頻繁に生かせてもらえて、あの経験は現在にも生きていると思います。ただ、一方で働く時間もかなり長いんですよね。基本的には、朝8時に出勤したら、終わるのはだいたい21時。1日12〜13時間働くのはザラでした。ただ、この生活だとプライベートな時間はなかなか確保しにくいのが実情です。
そこで、病院を退職して、デイサービスに転職をしました。定時が18時ぐらいだったおかげもあり、以前から興味があった筋トレに力を入れられるようになったんです。加えて、もともと勉強するのが好きなタイプだったんで、どんな風に鍛えれば効率的に体が変わっていくのか、研究しながらのめり込んでいったのもこの時期でした。
コロナ禍に開業したからこその苦労も。客足改善の理由は?
パーソナルジムを立ち上げようと思ったのは、病院勤務の頃にちょっとぽっちゃり体型だったコンプレックスが影響しているかもしれません。自己肯定感がかなり低くて。でも、勤めているときに一度やせたとき、周りの皆さんに褒めてもらえたことがすごく記憶に残っていたんです。「自分は体を変えることができるんだな!」と、自信につながりました。それに、リハビリが専門なので、治療やトレーニングの指導もできる。そんな要素のかけ合わせができるのも自分ならではなのかも? と思い、パーソナルトレーナーに転向することを決めたんです。
ただ、開業届を出したのは、デイサービスの仕事を退職してから3ヶ月後。準備期間はほぼなく、2020年のまさにコロナ禍でした。最初の3ヶ月間、緊急事態宣言の影響で退会者が続出して、月の売り上げが1万5000円とかで……(笑)。もう、藁にもすがる思いで最初の2ヶ月は無料の会員を募りました。
残念ながら、無料期間が終わっても残ってくれる方は少なかったんですが、口コミの効果ってすごい……! ジムをオープンして3ヶ月が過ぎてからは、どんどんお客様が増えていきました。ご家族で通ってくださるケースも多く、“信頼できるパートナー”として見てもらえているのかな? と感じられて、とても嬉しく思います。
大切にしているのは、どんな風にトレーニングをしていきたいか、事前にしっかり対話をすることです。ご要望をうかがいながら、いくつか選択肢がある中で、どれが一番やりやすいかを確認する。強制感なく、居心地よくトレーニングを続けてもらえることが肝要だと考えています。なかなか調子が上がらなくても、二人三脚で頑張っていく。悩みも分かち合って、一緒に自己肯定感を上げていけるのが理想的ですね。
また、「臨床栄養指導士」や「睡眠ヘルスアドバイザー」、「スキンストレッチスペシャリスト」の資格は、ジムを開設してから取得しました。健康についてアドバイスをする際、食事と睡眠、運動に関する知識は必須になってくると思ったからです。だから、この3つに関しては興味があって勉強していたら、資格がついてきたという感じなのかも……。でも、お客様に食事や睡眠を説明する上で裏付けがあったほうが安心していただけるので、頑張っておいてよかったと、今になって実感しています(笑)。
理学療法士のキャリアを生かした、深い知見に基づくトレーニング
“整える×鍛える”という要素のかけ合わせは、理学療法士の経験があるからこそ、結果を出せる強みだと自負しています。関節や筋肉の位置が適正ではない状態でトレーニングをしてもケガにつながりやすいし、いい体を作りにくいと思うんです。
なので、まずは負担なく施術できる「皮膚整体」で体の歪みを整えてから、鍛え始める手法を取り入れています。あと、「動作分析」が得意分野なので、鍛える部位をより効率的にトレーニングするための動きに関するアドバイスも、積極的に行っています。
“しっかり食べて痩せられる”のも、特長のひとつ。お客様にも「こんなに食べていいの!?」と、よく驚かれるんです(笑)。基本的には、10年ほど前のことからカウンセリングしていき、現状を把握した上で、食事の改善を促します。その結果、食事量が少なすぎて代謝が上がらない状態の方が比較的多い印象ですね。
だから、栄養素がしっかりしているものを、ちゃんと食べるところから改善していただく。ダイエットって、食事量を減らすイメージがあると思うんですが、そもそも足りないところから減らしてしまうと、もうマイナスに振れちゃうんですよ。それをゼロに持っていくイメージです。
一方で、食べ過ぎの方には、過食してしまう要因を根掘り葉掘り聞きます。摂取カロリーを減らしながら、ビタミンやミネラルなどといった必要な栄養素の話をし、メニューを提案しながら改善していく感じですね。プラスに傾いている方の場合も、ゼロの状態を目指します。
検査キットを利用して、自宅で手軽に受けられる「遺伝子検査」技術を導入しているのも特色のひとつです。生まれ持った性質を把握できる……というとちょっと大げさかもしれませんが、糖質や脂質、たんぱく質の中で代謝がしやすいもの、そうでないものを知ることで、ダイエットやボディメイクを行う上で指針にしています。
ただ、より重要視しているのは生活習慣なので、検査結果を気にしすぎないよう、お客様には伝えています。まずは生活習慣を変えて、それでも結果が出にくいようなら、別のアプローチを考えていくようなイメージです。
経営面の工夫で言うと、安価で使えるジムをもう1店舗展開しているので、そちらとしっかり連携を取れるように心がけています。私のリソースが空かなくても、お客様が誰ひとりとして、迷わずトレーニングを継続できるようにするのが理想です。
姉妹店はSTART LITE GYMという名前で、月間2回までパーソナルトレーニングを行えて、トレーニングメニューや食事メニューの作成までサポート。ひとりで利用できる日も設けているし、入会者の家族も使えます。“軽く始められる=ライト”というイメージで名付けたんですが、名前以上に充実したサービスがお客様に好評です。
心身ともに整った状態を目指し、トータルケアの充実を目標に
現在、フィットネス業界では、“整える×鍛える”がトレンド化してきている印象があります。開業した頃と比べると、めちゃくちゃ増えたな……と。“整える”は “癒やす”とも言い換えられると思うんですが、今後は心の健康も含めたトータルケアが重要になっていくと考えています。
危惧しているのは、20代の若者にも増えている自律神経の乱れです。食生活や生活習慣の乱れが関与しているとされますし、体を動かさない娯楽が増えたことで、メンタルが前向きになりにくくなっているのかもしれません。となると、基盤の面から改善していき、心身の両方が整うアプローチが必要になってきます。というのも、睡眠のサイクルが乱れて質が下がれば、食事の時間や内容にも影響が出てきてしまうと思うんです。
そこで今検討しているのは、自律神経の状態を測る装置の導入です。これにより、お客様自身が体の状態をより理解し、こちらとしても必要な改善策を講じやすくなります。自律神経の乱れは体重の増減にも関連性があるし、ダイエットやボディメイクを目指すなら改善が必須と言えるでしょう。
私がフィットネス業界で活動する中で最も大切にしているのは、お客様の人生を変えることができる可能性があるということです。何ヶ月間もの間、相手の生活に寄り添い、真剣にサポートすることで、人生を豊かにするお手伝いができるんです。それによって自己肯定感が高まり、結果として社会全体がよりよくなることにつながるはず。そう考えると、すごく意義のあることを仕事にできているんだと、とても誇りに思います。
最後に、これからフィットネス業界で働くすべての方々に伝えたいのは、勉強を続け、知識を深めることの大切さです。私たちは、お客様の人生に大きな影響を与える責任があります。そのためには、正しい知識と技術が不可欠です。常にアップデートを絶やさず、世の中を元気にしていきましょう!
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